呉服屋の長男として生まれた私は、いつも着物に前掛け姿の母を見て育ちました。母の思いではというと着物姿。母は着物の中でも特に大島紬が好きで、よく私に「このきものを着たら他の着物は着れない!」などとよく話していたことを思い出します。大島紬の着易さと丈夫さと軽さは昔から「着物の王様」とまで言われて来ました。
そんな子供時代の影響でしょうか、大島紬の素晴らしさと日本人が作る伝統の凄さに魅せられて40年。そんな日本の伝統を大切にしたい。大島の軽くて、着やすいという特長をそのままに今まで大島紬にはあまり存在しなかったキレイな明るい色で大島紬織の無地のきもの作ったらどんなにステキだろうと・・・。産地鹿児島の機屋(はたや)さんに出向き、試行錯誤の末に出来上がった本場色大島紬をご紹介します。緻密な絣糸と特殊な糸を使用し、染めの技術とコラボした新しい大島紬です。一枚の着物をプロデュースすることは思いのほか大変でしたが、創造する楽しさと快感を存分に味わいました。初めて大島紬をお召しになる方へのファースト大島としてお勧めいたします。
▼絣こそ大島紬の証明
締め機(しめばた)とは、手織り機を使って絣を造る大島紬特有なタテ糸には綿糸が使われ、ヨコ糸が大島紬となる絹糸です。タテ糸の綿糸で締められ部分が防染(ぼうせん)され、絣ができる仕組みです。この作業は織り上がった反物の絣の出来具合に大きく関るとても大切な工程になります。絣が鮮明に出るようその名前(締め)のとおりとても力を必要とします。
▼きゅらさの秘密
12マルキの緻密な絣。【きゅらさのタテ糸は1440本(18算ヨミ)】通常は1240本(15.5算ヨミ) ※1算=80本袷でも単衣でもお召し頂ける特殊な糸を使用。
巾広×長尺(三丈五尺以上)で織り上げてあるのでどのような寸法にも対応。
男の着物としても最適です。
羽織と着物の色の組み合わせであなただけの色彩コーディネートが楽しめます。
▼大島紬である条件は・・・。
1、締め機であること 絣ムシロ(手機)をつくり染色して綿の糸を解いて絣糸を作る。
2、絹であること なぜ絹糸を使っているのに絹であることを条件にするのか。通常は絹以外の不純物がついているので、それをキレイに取り除いた糸に限定。
3、平織りであること ちりめんやじゅもん、お召しのような織り方 ではないということ
日本人が1日に目にする色数は10,000色もあると・・・ヨーロッパなどでは、およそ3,000色くらいだと、以前、聞いたことがあります。鼠色(ねずみいろ)だけとっても、百鼠というくらい100色もの鼠色が現代に活かされています。色を決定するに当って、1年に12ヶ月の12色にしようか・・・もう少し微妙な色数を増やして二十四節気の24色でまとめてみようかといろいろ考えてみました。大島紬の独特の風合いに添う色は・・・、大島紬の生地に出会ってからおよそ1年間、色出しの試作を重ね、30代、40代、50代とそれぞれのきもの好きの方に何度もモニターしていただき、やっと決定した12色。大島紬の軽くて、着やすいという特徴をそのままに、カジュアルすぎないきれいめな普段着としてぴったりな一枚になりそうです。帯び合わせ次第でいろいろに着こなせます。12マルキという緻密な絣が入っているので、単色でありながらのっぺりとした印象にはならず、パステルカラーでも深みがあり、大人の雰囲気になっています。創り甲斐のあった12色です。。
寒い冬が過ぎて、風や日差しのぬくもりが心地よく感じられるようになってくると、春らしい明るい色のものを着てお出かけしたくなりますよね。そんな時にお薦めなのが、まるで桜の花を思わせるような、優しいピンク色の大島紬です。それに白地に大きな花の模様がとても華やかな帯を合わせて、小物にもピンクや白、赤を基調とした色を取り入れて、春らしくとっても明るく優しい雰囲気のコーディネートです。これを着て、お友達とお茶に行ったり、いろいろなところにお出かけしてみてはいかがですか。想像するだけでウキウキ楽しくなりますね。
ラベンダー色の大島紬の無地に紅型模様の紬の帯。帯、草履に濃い目の色合いを使い、きものとのメリハリをつけたコーディネイトです。濃い小豆色の帯締めで全体を引き締めて、淡いグリーンの帯揚げで帯ときものを調和してます。きものだけ見ると少しクールに見えますが、ラベンダーは小物によって暖かい雰囲気にもなります。紅型の帯は紺色を基調にしていろいろな色が入っていますので帯締め、帯揚げ、半衿などで大島の風合いを楽しみながらかなり幅広いコーディネイトが楽しめます。